6. 一日の始まり

男たるもの、毎日の身だしなみには気をつかっているつもり。ボスがしょっちゅう僕の写真を撮りたがるから、寝ぐせでぼさぼさなのも何だしね。朝起きたら一番に、全身の毛を丁寧にとかして、肉球の隙間も忘れずきれいに整える。残念なことに僕のための歯ブラシは用意されていないので、しかたなく植物(ボスいわく作り物らしい)の葉っぱで毎日歯を磨いている。細くて固い葉っぱが僕の歯の隙間やザラザラの舌にこすれる度、シャーッ、シャーッと気持ちのいい音がする。この音を聞くと、ピケ・ヘルナンデスの一日がようやく始まったなあって耳の裏が熱くなる。今日こそは、失くしたあれやこれやの宝物たちを見つけ出したいって思う。
ピンク色の変なうさぎのぬいぐるみに、6つのボール、しましまシッポの猫じゃらしと、ボスの消しゴム、ぺちゃんこのモモンガや、モケモケのエビフライ。みんなどこへ行ってしまったんだろう。うさぎのデーヤンのケージの下にもベッドの下にも、どこにも見当たらない。捜索に疲れ果てて、僕はまた肉球の隙間をゆっくりと整える。これは、君たちのことを忘れてないよってサイン。そしてまた探して、探して、いつのまにかソファの隙間に前脚を突っ込んだまま眠ってしまう。
目を覚ますといつのまにかボスが帰ってきていて、机の上にエビフライとボールが二つ置かれていた。僕は何度もボスにお礼を言うと、机の上の宝物に助走をつけて跳びかかり、再会を祝う。