33. ついつい手が出てしまう

 本当は仲良くしたいのに、一緒に遊びたいのに、ついつい手が出てしまう。うさぎのデーヤン・スパラヴァロや、死にかけのじいちゃんうさぎを見ていると、だんだんと体中がザワザワして、噛みついたり、引っ掻いたりしたくなってしまうんだ。どうしても衝動を抑えきれない自分がいる。噛みついた後にハッと我にかえって、あわてて彼らの首をなめてごめんと謝る。毎日毎日、それの繰り返し。

 夢の中では、彼らと一緒にボールを追いかけたり、おやつを交換して、一緒に木登りをしたりしてとても楽しい。彼らは僕よりも脚が早く勇敢で、鳥を捕まえてみせたり、木のてっぺんになっている木の実を取って僕に放り投げたりする。とても賢くて愉快なやつらで、僕もこんな友達ができて最高に誇らしい。
 それなのに夢から醒めると、現実の彼らはただケージの中にだらりと寝そべっている。僕と一緒に冒険するなんて遠い遠い現実だということがわかって腹が立ち、僕はまたパンチをくらわす。そして仕留めたいとすら思う。
 彼らと友達になり、一緒に冒険の旅に出る前に、彼らはこのケージの中からいなくなってしまうんだろうね。

ピケ・ヘルナンデスの知るかぎり
 1. ある夜のこと 2. パトロール開始
 3. 扉が開く日 4. 夢の中でも遊ぶ
 5. 冗談で一枚 6. 一日の始まり
 7. 僕がおそれるもの 8. 監視されてるっぽい
 9. おやつは永遠10. 窓の外には
11. 歌を教えてあげる12. 嘘やいたずらまみれの、一歳の誕生日
13. 誕生日とエイプリルフール14. 新しい世界へ、ついに進出
15. 空飛ぶピケ・ヘルナンデス16. うさぎの復活劇
17. ピケ・ヘルナンデス入り布団袋18. ピケ・ヘルナンデス監督の活動報告
19. 失踪中のあの子20. 得意技はたくさん
21. またまた復活!22. のびのび
23. のんびり応援24. パトロールと換毛な日々
25. 二十年ぶりの再会26. 二十年ぶりのライブ
27. ようやく一息28. 快眠月間
29. ジャマー月間に変更30. 何の音でしょう
31. まちがえないで32. テレビ観戦
33. ついつい手が出てしまう34. 僕がパトロールするわけ
35. 長生きの回36. 隠れマッチョ
37. カスカス声とフルート38. ペットセメタリー
39. あっという間にお盆休み終了40. 夏を取り戻す
41. 出てやるもんか!