8. 監視されてるっぽい

 ある時気づいたんだ。部屋の中の様子がなんだか変だって。誰もいないはずなのに、ウイーン、ウイーン、って、どこからか音がする。よーく探してみると、部屋の隅に、前はなかった黒い変な機械が置いてある。僕が立ち上がって部屋の奥に移動するとウイーン。手前に移動するとウイーン。僕が歩く度に機械が動いているようだった。僕はすぐさま機械に飛びついて、パンチをくらわした。機械は横に倒れてもまだ、ヴヴヴヴ…と、うめきながら動いている。さらに二度、三度とパンチして床に叩き落としたら、ようやく静かになった。
 その夜、帰ってきたボスは機械を床から拾い上げて、僕が届かないもっと高い場所にテープで縛りつけていた。これはピケ・ヘルナンデスの安全のため、留守中にちゃんとご飯を食べているか、大暴れしていないか見張る用なんだって。僕はあきれはてて、ソファの上にひっくり返ったね。そんなに信用されてないのかって。

 ある日、部屋の中には僕とうさぎのデーヤンだけ。いつも閉じてあるデーヤンのケージのフタが、珍しく開いていたんだ。どうやらボスが閉め忘れていたみたい。僕は「やあっ!」と掛け声をあげて、デーヤンのケージの中に飛び込んだ。デーヤンを小突いて、緑色の美味しくもないご飯を少々いただいたりした。すると突然、あの黒い機械から「ピケェェェェ~~~~ッ!!」ってものすごい声が聞こえたんだ。どうやら監視しているボスが気づいて、機械から声を出したみたい。「もうすぐ家につくから、うさぎを引っかくなよ~~!!」って。僕はもうおかしくておかしくて、腹がよじれるほど笑ったよ。
 少ししてドアがバタンと開いて、ボサボサに髪が爆発したボスが飛び込んできた。その時のボスの顔ったら、最高だったよ。きょとんとした顔でボスを見上げるうさぎのデーヤン、ゼイゼイ息を切らして立ち尽くすボス、そのボスに向かってシッポを上げお尻を見せて、優雅で余裕たっぷりなピケ・ヘルナンデス。みんなにも監視カメラで見てもらいたかったな。

ピケ・ヘルナンデスの知るかぎり
 1. ある夜のこと 2. パトロール開始
 3. 扉が開く日 4. 夢の中でも遊ぶ
 5. 冗談で一枚 6. 一日の始まり
 7. 僕がおそれるもの 8. 監視されてるっぽい
 9. おやつは永遠10. 窓の外には
11. 歌を教えてあげる12. 嘘やいたずらまみれの、一歳の誕生日
13. 誕生日とエイプリルフール14. 新しい世界へ、ついに進出
15. 空飛ぶピケ・ヘルナンデス16. うさぎの復活劇
17. ピケ・ヘルナンデス入り布団袋18. ピケ・ヘルナンデス監督の活動報告
19. 失踪中のあの子20. 得意技はたくさん
21. またまた復活!22. のびのび
23. のんびり応援24. パトロールと換毛な日々
25. 二十年ぶりの再会26. 二十年ぶりのライブ
27. ようやく一息28. 快眠月間
29. ジャマー月間に変更