10. 窓の外には

暇さえあれば毎日、窓から外を見ている。朝は鳥の群れがキュルキュルギャアギャア鳴いて僕を起こすし、大きな車が唸り声を上げて通り抜け、その後ろをボスにそっくりな人間が大きく口を開けて走っていくのが見える。こうやって、いつか外に出て冒険する日に備えて、外の様子を観察しているんだ。あの大きな木を登るにはどれくらいの爪が必要かな、とか、空を飛んでる鳥や虫は捕まえたらどんな味だろう、とか、想像するだけで僕の喉から「カカカカ」と聞いたこともない音が勝手に飛び出してくる。遠い記憶で、生まれたばかりの頃は外で暮らしていたような気もするんだ。違うかな?
ボスに聞いても、ピケ・ヘルナンデスが生まれた時のことはまったく知らないんだって。この人はなんにも知らない。僕がいつかこの家から脱出をもくろんでいることも、その時のために吐き出した毛玉をベッドの下に集めていることも、ボスが食べてる甘辛いお菓子を盗み食いしていることも、なんにも知らないようだ。ピケ・ヘルナンデスがいつか突然消えてしまう前に、もっと僕のことを観察した方がいいと思う。僕が毎日窓から外を観察しているみたいにね。
そうそう、昨日ボスが帰ってくるのを僕が窓からのぞき見していたのも、当の本人はきっと知らないと思うよ。