34. 僕がパトロールするわけ

 さて問題です。ピケ・ヘルナンデスはどこにいるでしょう?
答えは二段積みハムスターケージの後ろにいる、でした。

 ほんとにこの家はみんないい加減だから、僕みたいなマメな男がいないと統制がとれないんだ。ボスは僕が退屈ゆえにいたずらをしていると思い込んでいつも怒っているけど、そうじゃない。犬やうさぎ、亀に蛇にハムスターにエサ用コオロギに、毎日欠かさず一軒一軒、彼らの家を回って様子をうかがっている。彼らが脱走でもしたら大変だからね。いつでも捕まえられるように見て回っているんだ。

 時には彼らの悩みを聞くこともある。特に亀のやつは生きるのが大変そうで、とにかくゆっくりのんびり時が経つものだから、ジワジワと死に向かっている感覚にうんざりしているようだ。できるものならネズミたちのようにスピーディーに、ぽっくり逝きたいよとぼやいていた。僕が手伝ってやってもいいんだけど、やつらは驚くほど頑丈で、そう簡単には死ねないらしい。強すぎる者にもそれなりの悩みがあるってわけ。
 僕の悩みなんて、半年以上探しているおもちゃが見つからない、だからほんとたいしたことないなと思うね。おもちゃをさがしつつ、動物たちに異常がないかどうか確認しに、今日もパトロールに行ってきます。

ピケ・ヘルナンデスの知るかぎり
 1. ある夜のこと 2. パトロール開始
 3. 扉が開く日 4. 夢の中でも遊ぶ
 5. 冗談で一枚 6. 一日の始まり
 7. 僕がおそれるもの 8. 監視されてるっぽい
 9. おやつは永遠10. 窓の外には
11. 歌を教えてあげる12. 嘘やいたずらまみれの、一歳の誕生日
13. 誕生日とエイプリルフール14. 新しい世界へ、ついに進出
15. 空飛ぶピケ・ヘルナンデス16. うさぎの復活劇
17. ピケ・ヘルナンデス入り布団袋18. ピケ・ヘルナンデス監督の活動報告
19. 失踪中のあの子20. 得意技はたくさん
21. またまた復活!22. のびのび
23. のんびり応援24. パトロールと換毛な日々
25. 二十年ぶりの再会26. 二十年ぶりのライブ
27. ようやく一息28. 快眠月間
29. ジャマー月間に変更30. 何の音でしょう
31. まちがえないで32. テレビ観戦
33. ついつい手が出てしまう34. 僕がパトロールするわけ