41. 出てやるもんか!

「ピケ~、ピケ~~」
さっきからずっと、ボスが必死で僕を探し回っている。

 ことの発端はこうだ。僕がのんびりと床で寝そべっていたら突然、ボスが僕を指さして笑った。
「ピケ、床の模様と一緒やん!同化してる~~」
 ボスは僕を写真に撮り、面白がってずっと笑っている。僕は段々と腹が立ってきて、勢いよくジャンプすると部屋から駆け出した。
 仕事部屋の外に置いてある洗濯物入れのランドリーバスケットの中に潜り込み、もう30分が経とうとしている。

 ボスが階段を上り下りして僕を探している。絶対に出てやるもんか。僕をバカにして笑いものにした罰だ。僕が行方不明になって、後悔して泣けばいい。
 シャッ、シャッ、シャッ、シャッ。
 ボスが猫じゃらしを振って、僕をおびき出そうとしている。絶対に出てやるもんか!
「うんまっ、チュールうんまあ!さいこ~!」
 ボスがおやつを食べたふりをして誘い出そうとするが、その手にはのるか。
 ペリペリっという音がして、おやつのかぐわしい香りが僕の鼻先に届く。僕の耳がピンと立ち、前脚が震える。
 香りとともに今度は、ピュッ、ピュウと、皿におやつを盛り付けている音がする。
 僕はたまらずにバスケットから飛び出し、皿に向かって一目散に突進する。

 とてもくやしい……。くやしいけど、おいしい。

ピケ・ヘルナンデスの知るかぎり
 1. ある夜のこと 2. パトロール開始
 3. 扉が開く日 4. 夢の中でも遊ぶ
 5. 冗談で一枚 6. 一日の始まり
 7. 僕がおそれるもの 8. 監視されてるっぽい
 9. おやつは永遠10. 窓の外には
11. 歌を教えてあげる12. 嘘やいたずらまみれの、一歳の誕生日
13. 誕生日とエイプリルフール14. 新しい世界へ、ついに進出
15. 空飛ぶピケ・ヘルナンデス16. うさぎの復活劇
17. ピケ・ヘルナンデス入り布団袋18. ピケ・ヘルナンデス監督の活動報告
19. 失踪中のあの子20. 得意技はたくさん
21. またまた復活!22. のびのび
23. のんびり応援24. パトロールと換毛な日々
25. 二十年ぶりの再会26. 二十年ぶりのライブ
27. ようやく一息28. 快眠月間
29. ジャマー月間に変更30. 何の音でしょう
31. まちがえないで32. テレビ観戦
33. ついつい手が出てしまう34. 僕がパトロールするわけ
35. 長生きの回36. 隠れマッチョ
37. カスカス声とフルート38. ペットセメタリー
39. あっという間にお盆休み終了40. 夏を取り戻す
41. 出てやるもんか!