41. 出てやるもんか!

「ピケ~、ピケ~~」
さっきからずっと、ボスが必死で僕を探し回っている。
ことの発端はこうだ。僕がのんびりと床で寝そべっていたら突然、ボスが僕を指さして笑った。
「ピケ、床の模様と一緒やん!同化してる~~」
ボスは僕を写真に撮り、面白がってずっと笑っている。僕は段々と腹が立ってきて、勢いよくジャンプすると部屋から駆け出した。
仕事部屋の外に置いてある洗濯物入れのランドリーバスケットの中に潜り込み、もう30分が経とうとしている。
ボスが階段を上り下りして僕を探している。絶対に出てやるもんか。僕をバカにして笑いものにした罰だ。僕が行方不明になって、後悔して泣けばいい。
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ。
ボスが猫じゃらしを振って、僕をおびき出そうとしている。絶対に出てやるもんか!
「うんまっ、チュールうんまあ!さいこ~!」
ボスがおやつを食べたふりをして誘い出そうとするが、その手にはのるか。
ペリペリっという音がして、おやつのかぐわしい香りが僕の鼻先に届く。僕の耳がピンと立ち、前脚が震える。
香りとともに今度は、ピュッ、ピュウと、皿におやつを盛り付けている音がする。
僕はたまらずにバスケットから飛び出し、皿に向かって一目散に突進する。
とてもくやしい……。くやしいけど、おいしい。